化学式はヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6OH2)・フルオロアパタイト(Ca5(PO4)3F)
フルオロアパタイトになると何が良いのか?
①結晶構造が密になる:OH基の体積より、F基の方が体積が小さくて済むため、同体積内であれば、F基で構成された結晶の方が、より多くのアパタイト結晶を構成することができる。これに伴い、同体積内により多くのPO4基を取り入れることができる。これが、フッ素がリカルデント(カルシウムとリン酸)の”運び屋”と言われる所以。これを考えるなら、”運び屋”というよりは”ストック場所”な感じがする。密度はハイドロキシアパタイト約3.076、フルオロキシアパタイト約3.19。この差をわかりやすく言うと、1立方メートルの箱にハイドロキシアパタイトとフルオロキシアパタイトを1立方メートルの箱に詰めると、約130kgの差がでるくらいの密度差。
②耐酸性が向上する:OH基よりF基の方が、H(酸)との親和性が低いため、アパタイト結晶が酸に溶かされにくくなる(Hと結合しにくくなる)。
〈カルシウムとリン酸とフッ素を同時に入れると効果が弱まる?〉
たしかに、フッ素はカルシウムと反応し「CaF2」、リン酸と反応し「FPO3」を生成し、不溶性となり再石灰化に寄与できなくなる。しかし、1450ppmレベルのFは、カルシウムやリン酸単体よりも、ハイドロキシアパタイトに親和性が高い。何倍結合しやすいかは判断しがたいが。しかし、9000ppmのレベルのFは、化学反応の平衡が変わる可能性もある。しかし、私が臨床で9000ppmを塗りたくった患者様の歯を削ってマイクロスコープで拝見したとき、そこには表層に明らかにFの効果によって修復されたであろう様子があった。ホワイトスポットの中は白いが、表層部は透明になっていた。結論として、1450ppmレベルであれば、カルシウム・リン酸・フッ素の、口腔内における同時適応は効果的と考える。9000ppmレベルであれば、リン酸・フッ素を多く含む(例えばMIペースト)とは、明らかでない化学反応の平衡を考えると、同時併用しない方がよいと考えられる。使用するなら、9000ppmを塗布して2・3分待った後(ハイドロキシアパタイトがフルオロキシアパタイトへと置換される)、1回お口をゆすいででもらい、MIペーストのようなものを塗ると適切な濃度のフッ素と、効果的と予測される。